地球の歩き方に載っている地図とは少し地形が違う雰囲気の道に出て迷ってしまいました。
それで帰り道を探してウロウロしていると、カンボジア人のおばさんが
「コンニチハ」
と言って僕の方に来て、道案内してくれることになりました。
このおばさんは少しだけ日本が話せるんやけど、
「私は日本が好きでもっと日本のことを知りたいから、お昼ごはんを私の家でいっしょに食べましょう」
と言ってきて、
道案内してくれた親切な人やし現地民の家にも行ってみたいと思って、バイクタクシーでいっしょにそのおばさんの家に行きました。
カンボジアは暑さ対策のために高床式住居にするのが伝統で、木と藁でできてる家が多いんやけど、
おばさんの家は現代的で僕の実家よりきれいでした。カンボジアの中では豪邸やと思います。
予想してたんと違うなあと思いながら家の中に入ると、
家の中にはおじいさんが一人いて、このおじいさんは日本語を話せないけどめっちゃフレンドリーで、
「サッカーが好きなのか!俺は日本人もサッカーも大好きだ!」
とか言ってきて、5秒で仲良くなりました。
その後はおばさんとおじさんと3人で話してたんやけど、
「何の仕事をしてるんだ?」
「給料は?」
「どこのホテルに泊まってるんだ?」
「部屋番号は?」
など、今思えば明らかに変な質問をされてたんやけど、そのときは英語で話すことに集中してたんで会話の内容はそれほど気にせずに答えてました。
それからおじいさんと話してると、
「君は旅をしてるのか。俺も船に乗る仕事をしているから色んな国に行っているよ」
「俺は船の中のカジノで働いているんだ」
「君が俺の船に乗るときはカジノで遊んで行くと良いよ」
「そうだ!今からカジノで確実に勝てる方法を教えるよ。その代わりに君は俺に日本語を教えてくれ」
という流れになり、
「カチ、マケ、ヒキワケ」など日本語を教えながら、
ブラックジャックでイカサマをして高確率で勝つことができる方法(おじさんがディーラーになり、相手の手札と、トランプの一番上にある次に引くカードを僕に合図して教えてくれる)を教えてくれて、
「君が俺の船に乗るときはこの方法を使って2人で金儲けしようぜ(笑)」
とか言って楽しく遊んでたんですけど、
「昨日、カジノで20万円儲けたラッキーなシンガポール人がいるんだけど、そいつが今から家に来るから、
さっき教えたイカサマの方法を使ってブラックジャックで勝負してみろ。
お金は賭けなくていいから遊びのつもりでやれ」
と言われ、
その後すぐ家にやってきたシンガポール人とブラックジャックをすることになりました。
それで、
「お金かけてへんから別にいいか」
と思いながらおじさんとイカサマをしてたら、当然僕の勝率が高くなって、
するとシンガポール人男性の機嫌がだんだん悪くなり、シンガポール人はこう言いました。
「次で最後のゲームにする」
「最後は本当に金を賭けるぞ」
「300ドル(3万円)だ」
「賭けなかったらその時点でお前の負けになるから金はもらう」
って言われたんやけど、言ってる内容がほとんどヤクザなんやけど、
僕が「やりたくない」って言っても
「やらんかったらお前の負けやから金はもらう」
って何回も言われて、きりがなかったんで、仕方なく300ドルを出してブラックジャックをすることになりました。
でもそのシンガポール人が
「500ドル」
「800ドル」
って言ってどんどん賭け金を吊り上げてきて、
最終的には2000ドル(20万円)くらいになりました。
それで
「賭けなかったらその時点でお前の負けになるから金はもらう」
というお決まりのヤクザ文句を言ってきて、
僕が「今は300ドルしか持っていない」と言うと
「キャッシングしろ」
と言われ、
他に何を言っても
「勝負しなければ金はもらう」
「金を払わなければお前は帰れない」
と言ってきて、
これはとにかく勝負しないと命が危ないと思ったんで、
2000ドルを賭けて、というか命を賭けてブラックジャックで勝負することになりました。
ちなみに、ようやくこのときに
「もしかして僕は今詐欺にあってるんちゃうかな」
って思ったんやけど、
完全に手遅れやからね。
で、最後の勝負でもおじさんが相手の手札と次に出るカードを合図して教えてくれてたんやけど、
たぶんシンガポール人とおじさんはカードを仕組んでいて、相手の手札は20というかなり強い数字で、
ブラックジャックは数字が21に近いほど強いから、僕は21を出して勝利するか、20を出して引き分けに持ち込むしかないというかなり厳しい状況になり、
この時点で僕の負けはほぼ確定で、2000ドルを払うか、死ぬかっていう状況やったんやけど、
僕の手札は21でした。
詐欺師に勝ちましたからね。
カイジになった気分でした。
シンガポール人は負けたことに怒ってそのまま帰り、
「おめでとう。君の勝ちだ!2人でお金を分け合おう。いくら欲しい?」
とおじさんに聞かれて、
とにかく僕は怖かったんで、これ以上関わらんようにしようと思い、
「僕がかけた300ドルだけ返せ。あとはいらん」
と言ってお金を返してもらいました。
最後に、
「お前らはときどきこんな事をしてるんか?」
と聞くと
「NO NO NO NO NO!!!」
って言ってたけど、
NOの言い方が完全にYESやからね。
それからすぐにその詐欺家族の家を出てゲストハウスに戻ったんやけど、
ゲストハウスの場所と部屋番号まで教えてたんで、
シンガポール人が
「イカサマをしただろ!」
と乗り込んでくるというシナリオも考えられるし、というか詐欺師がお金を盗らないまま帰すはずが無いから、それしかないやろうと思い、
そのままゲストハウスにいたら危険やと判断してすぐにチェックアウトして、
バッタンバン行きのバスに飛び乗ってプノンペンを脱出しました。
それで、後から気付いたんやけど、
そのとき持ってた地球の歩き方にこの詐欺の手口載ってるんですよね。
最初それを見たときは「イカサマ賭博なんかに騙される奴おらんやろ」とか言うてたけど、
まんまと騙されました。
どうやら有名な詐欺師のようです。
僕は結局お金を盗られずに無事生還したから、おもしろい体験ができて良かったと思うけど、
日本語で道案内してくるプノンペンのおばさんにはほんまに気を付けてください。
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